🦴 骨粗しょう症 治療薬ガイド

あなたの体の状態に合わせた
骨粗しょう症の治療薬について

腎機能障害・肝機能障害・高齢・糖尿病・ステロイド服用中・歯科治療中など、患者さん一人ひとりの合併症に応じて、最適な治療薬は異なります。

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骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン 2025年版に基づく情報です

はじめに

骨粗しょう症の治療薬とは

骨粗しょう症の治療薬は大きく3種類に分かれます。骨が壊れるのを抑える「骨吸収抑制薬」、骨を積極的に作る「骨形成促進薬」、そして骨の土台を整えるビタミンDやカルシウムなどの「補助薬」です。

重要なのは、患者さんの腎臓・肝臓の機能、年齢、合併症、服用中の薬によって、使える薬・避けるべき薬が大きく変わることです。当院では、患者さんのご状態を丁寧に確認した上で、最適な薬剤を選択しています。

2025年版ガイドラインの「推奨薬」:椎体・非椎体・大腿骨近位部骨折のすべてに対して抑制効果が証明されているのは、デノスマブ・ビスホスホネート(アレンドロネート/リセドロネート/ゾレドロン酸)・ロモソズマブの3種類です。

治療薬の種類

主な骨粗しょう症治療薬

当院で処方・管理できる主な骨粗しょう症治療薬の一覧です。

骨吸収抑制薬

ビスホスホネート(BP)推奨

アレンドロネート(週1・月1)、リセドロネート、ミノドロネート、イバンドロネート、ゾレドロン酸(年1回点滴)。骨に長期蓄積し効果持続。5〜10年で休薬を考慮。

骨吸収抑制薬

デノスマブ(プラリア)推奨

6か月に1回の皮下注射。大腿骨近位部骨折も抑制。腎排泄でないためCKD患者にも使いやすい。中止後リバウンドに要注意。

骨吸収抑制薬

SERM(ラロキシフェン・バゼドキシフェン)

女性のみ適応。乳腺にはアンタゴニスト。椎体骨折を抑制。血栓塞栓症のリスクに注意が必要。

骨形成促進薬

テリパラチド(フォルテオ・テリボン)

毎日・週1〜2回の皮下注射。骨リモデリングを活性化して骨形成を促進。使用期間は最長24か月。中止後は骨吸収抑制薬へ継続が必須。

骨形成促進薬

ロモソズマブ(イベニティ)推奨

月1回皮下注射×12か月。骨形成促進+骨吸収抑制の二重効果。直近1年以内の心血管イベント既往者には使用しない。

補助薬・基礎療法

活性型ビタミンD3・ビタミンK2・カルシウム

エルデカルシトール(単独で椎体骨折抑制効果あり)、アルファカルシドール、メナテトレノン、カルシウム製剤。腎機能・Ca値の定期確認が必要。

合併症・状態別の薬剤選択

患者さんの状態に合わせた治療薬の選び方

以下の分類から、ご自身に近い状態をご覧ください

🫘

腎機能障害(CKD)のある患者さん

eGFRの値によって安全に使える薬が変わります。ビタミンD欠乏・低Ca血症の管理が特に重要です。

使用しやすい・推奨される薬
  • デノスマブ(プラリア)腎排泄でないためCKDでも使用可。ただしeGFR <30では低Ca血症に特に注意。投与前にビタミンD充足が必須
  • SERM(ラロキシフェン・バゼドキシフェン)女性限定。腎機能への影響が比較的少ない
  • テリパラチド透析患者を除き使用可能なことが多い
  • 天然型ビタミンD(サプリメント)活性型と異なり、比較的安全に使用できる
注意・原則避ける薬
  • ビスホスホネート(経口・点滴)eGFR <30〜35では原則禁忌。eGFR 35〜60では種類・用量の調節が必要。ゾレドロン酸はeGFR <35で禁忌
  • 活性型ビタミンD3(エルデカルシトール等)高Ca血症・eGFRさらなる低下リスク。使用時は定期的な腎機能・Ca測定が必須
  • エチドロネート腎機能障害で蓄積リスクあり、慎重投与

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重要ポイント:デノスマブ使用時は低Ca血症予防のため、必ずビタミンDを充足してから開始します。また、デノスマブを中止する場合は2〜3か月後にリバウンド骨折リスクが急上昇するため、必ずビスホスホネート等の後継薬へ切り替えが必要です。腎機能の定期確認(少なくとも年1〜2回)を行います。

🧓

高齢者(特に75歳以上)の患者さん

大腿骨近位部骨折の予防が最重要。転倒リスク・サルコペニア・アドヒアランスも含めた総合的な管理が必要です。

推奨・使用しやすい薬
  • デノスマブ(プラリア)6か月に1回の皮下注射でアドヒアランス良好。大腿骨近位部骨折も抑制
  • イバンドロネート点滴静注(ボンビバ)月1回の点滴。経口薬が飲みにくい方に。服薬姿勢の制約がない
  • ゾレドロン酸(リクラスト)点滴年1回の点滴で大腿骨近位部骨折も抑制。腎機能が保たれていれば有力な選択肢
  • ビタミンD(サプリ)+カルシウム転倒・骨折リスク低下。あらゆる治療の基礎として継続
注意が必要な点
  • 長期ビスホスホネート(5年以上)非定型大腿骨骨折リスクが期間依存性に増加。5〜10年での休薬(薬剤休暇)を検討
  • 経口BP(毎日・毎週服用)服薬方法が複雑(起床時・水で服用・30分は横にならない)。認知症・嚥下障害がある方には管理が困難
  • デノスマブの通院途絶定期通院が必須条件。通院困難になった場合のリバウンドが危険
  • ロモソズマブ直近1年以内の心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中等)がある場合は使用しない

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重要ポイント:高齢者では転倒予防・筋力維持(サルコペニア対策)も骨折リスクを下げる重要な柱です。薬物療法と並行して、定期的な運動・適切なたんぱく質摂取・ビタミンD補充を組み合わせることが推奨されます。骨折リスクがある限り治療を生涯継続することが原則です。

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肝機能障害のある患者さん

肝臓でのビタミンD活性化が低下しやすく、骨折リスクが高まります。Ca・ビタミンD管理が治療の基礎です。

使用しやすい・推奨される薬
  • デノスマブ(プラリア)肝代謝でないため肝機能の影響を受けにくい。有力な選択肢
  • ビスホスホネート(BP)肝代謝でなく骨・腎排泄のため比較的安全。腎機能の確認は必要
  • 活性型ビタミンD3(アルファカルシドール等)肝臓での25水酸化が低下している場合は活性型が有用
  • カルシウム製剤吸収不良を伴う場合は経口Ca補充が重要
注意が必要な薬・状態
  • SERM(ラロキシフェン等)肝代謝のため、重篤な肝機能障害では禁忌
  • 天然型ビタミンD(サプリメント)肝臓での25水酸化が障害されていると効果が低下。25(OH)D値を測定して判断
  • アルコール性肝疾患アルコール摂取自体がFRAXの骨折リスク因子。禁酒指導が治療の前提
  • ビタミンK2(ワルファリン服用時)抗凝固薬ワルファリンの効果に影響するため原則禁忌

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重要ポイント:肝疾患のある患者さんはビタミンD不足・欠乏(血清25(OH)D <20 ng/mL)を合併しやすく、骨粗しょう症治療薬の効果が低下します。治療開始前に25(OH)D値を測定し、不足している場合はまずビタミンDを補充することが重要です。

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糖尿病のある患者さん

骨密度が正常でも骨折リスクが高い(骨質劣化)特殊な状態です。転倒リスク・低血糖・CKD合併を総合的に評価します。

推奨・使用しやすい薬
  • ビスホスホネート(BP)腎機能が保たれていれば第一選択。骨質改善効果も期待
  • デノスマブ糖尿病性CKDを合併している場合も使用しやすい
  • 天然型ビタミンD補充インスリン分泌・抵抗性改善にも関連。骨折リスク低下の基礎として重要
注意が必要な点
  • チアゾリジン系薬(閉経後女性)ピオグリタゾン等が骨折リスクを上昇させる可能性。骨密度の定期確認を
  • 低血糖を起こしやすい薬剤低血糖による転倒が骨折に直結。血糖管理の最適化が骨折予防にも重要
  • 活性型ビタミンD3CKD合併時は高Ca血症・eGFR低下に注意。定期的なモニタリングが必要

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重要ポイント:糖尿病患者さんは骨密度が正常値でも骨折しやすい(AGEs蓄積等による骨質劣化)ため、FRAX等で骨折リスクを過小評価しないよう注意が必要です。罹病歴10年以上・HbA1c 7.5%以上・インスリン使用中・サルコペニア合併では骨折ハイリスクとして積極的な介入を検討します。

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ステロイド(グルココルチコイド)を服用中の患者さん

ステロイド性骨粗しょう症は骨密度低下と骨質劣化の両方が急速に進行します。服用開始早期からの積極的な予防・治療が必要です。

推奨・使用しやすい薬
  • ビスホスホネート(アレンドロネート・リセドロネート等)ステロイド性骨粗しょう症に対する第一選択薬。ステロイド開始と同時に投与開始が理想
  • テリパラチド高リスク症例(既存骨折あり・高用量ステロイド等)に特に有効。BPより骨密度増加効果が大きい
  • デノスマブ腎機能低下を合併している場合の有力な選択肢
  • ビタミンD+カルシウム補充ステロイドによるCa吸収障害・ビタミンD作用低下を補うため必須
注意が必要な点
  • SERM単独投与ステロイド性骨粗しょう症に対するエビデンスが不十分
  • FRAXの適用外ステロイド使用中はFRAXによる薬物治療開始基準が適用されない(別の基準を使用)
  • 高カルシウム血症ステロイド自体もCa代謝に影響するため、活性型ビタミンDの過剰補充には注意

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重要ポイント:ステロイドは服用開始3〜6か月以内に急速に骨密度が低下します。プレドニゾロン換算で1日5mg以上を3か月以上使用する場合、または使用予定の患者さんには原則として骨粗しょう症治療を同時に開始します。

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歯科治療中・抜歯を予定されている患者さん

ビスホスホネートやデノスマブは顎骨壊死(MRONJ)のリスクを上昇させます。多くの場合は継続投与が可能です。

適切な対応・続けられる薬
  • 抜歯時もBP・デノスマブは基本的に継続可能2023年の日本のポジションペーパーでは、一般的な歯科治療・抜歯では「休薬不要」が基本方針です
  • 治療開始時に歯科紹介・口腔内確認BPまたはデノスマブ開始前に口腔ケア・問題のある歯の治療を完了することが推奨
  • 定期的な口腔ケアの継続口腔衛生の維持がMRONJの最大の予防策。定期的な歯科健診を続ける
  • テリパラチド・SERM顎骨壊死リスクなし。歯科治療中の代替選択肢として検討できる
注意が必要な状況
  • 高侵襲な口腔外科手術(インプラント等)大規模な口腔外科処置の場合は専門的な判断が必要。担当歯科医と相談
  • 長期高用量BP投与+がん患者骨転移治療目的の高用量BP(骨粗しょう症用量の数倍)ではリスクが大幅に上昇
  • 顎骨壊死の初期症状歯痛・顎の腫れ・しびれ・歯肉の露出骨などがあれば歯科医師へ速やかに相談

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重要ポイント:骨粗しょう症治療薬と歯科治療は基本的に両立可能です。薬を自己判断でやめないことが重要で、自己中断によって骨折リスクが急上昇します。当院では歯科医師との連携書(情報提供書)の作成にも対応しています。

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軽度〜中等度認知症(CDR1相当)のある患者さん

短期記憶障害あり・会話可能・ADLは指示で自立・歩行可能。「今できる」ではなく「1年後もできるか」を前提に、早期から注射製剤へ移行する設計が合理的です。

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戦略サマリー:第一選択=デノスマブ(プラリア) / 代替=週1回ビスホスホネート(条件付き) / 補助=ビタミンD ± Ca
推奨される薬・対応

  • ① デノスマブ(プラリア)【第一選択】
    6か月に1回の皮下注射。介護者の関与で確実に継続可能。飲み忘れ・誤嚥・重複内服リスクがなく、転倒リスクが高い高齢者に最適。認知症が進行しても継続できる唯一の強力な骨粗しょう症治療薬

  • ② ボナロンゼリー / 週1回BP【条件付き代替】
    アレンドロネート35mg週1回(ゼリー製剤は嚥下しやすく高齢者に適合)。介護者による服薬管理・30分座位保持・誤嚥リスク低いことが条件。認知症進行で将来的に継続困難になるため短中期的選択と位置づける

  • ③ テリパラチド【骨折既往の重症例のみ】
    骨形成促進薬。既存骨折あり・高用量ステロイド使用など高リスク例に有効。自己注射困難なため介護者が対応できる場合のみ。18〜24か月後にデノスマブへ移行

  • ④ 活性型ビタミンD3 + カルシウム【必須補助】
    エルデカルシトール0.5〜0.75μg/日またはアルファカルシドール。転倒予防・筋機能改善・Ca吸収促進。デノスマブ開始前にビタミンD充足が必須(低Ca血症予防)
注意・避けるべき状況

  • 内服BPの服薬エラーリスク
    飲み忘れ・重複内服・誤嚥・起床時ルール逸脱。認知症では構造的にリスクあり。進行を前提に将来のデノスマブ移行を計画する

  • デノスマブの通院途絶・投与遅延
    中止後2〜3か月でリバウンド多発椎体骨折リスクが急上昇。中止時は必ずビスホスホネートへ切り替え。6か月ごとの確実な投与管理(日程固定)が必須条件

  • 低Ca血症(特にCKD・ビタミンD欠乏合併時)
    デノスマブ開始前に血清Ca・eGFR・25(OH)D測定が必須。投与後1〜2週でCa再検。ビタミンD不足は事前に補充してから開始する

  • 通院困難・注射不可になった場合
    デノスマブが使用不可になった場合の現実解:内服BP(介護者管理可能なら)→ ビタミンD中心治療 → 転倒予防・環境整備(手すり・段差除去・照明改善)へ重心を移す


推奨処方例(パターンA:デノスマブ中心)
パターンA(推奨)
デノスマブ(プラリア)60mg
皮下注 6か月ごと

エルデカルシトール 0.5μg/日
(+Ca製剤 必要時)

パターンB(内服管理可能な場合)
ボナロンゼリー 35mg
週1回 起床時

エルデカルシトール 0.5μg/日
→ 将来デノスマブへ移行

📋 検査フォロースケジュール
開始前
Ca・P・Cr
ALP・25(OH)D
DXA

1〜2週後
血清Ca
(低Ca
チェック)

3〜6か月
Ca・Cr
ALP
再投与

年1回
DXA
転倒リスク
ADL評価

💡
重要ポイント:認知症は進行するため、「今できる」ではなく「1年後もできるか」を前提に治療を設計します。転倒→骨折→要介護化の連鎖を断つため、早期からデノスマブを導入し6か月ごとの定期注射(例:4月・10月固定)を家族・施設スタッフと連携して管理することが最も合理的です。デノスマブ中止時は必ずビスホスホネートへ切り替え(リバウンド骨折予防)。

治療全般の注意点

骨粗しょう症治療を受けるにあたって

📅 治療は継続が大切です

骨粗しょう症の治療は、骨折リスクがある限り生涯継続することが基本です。自己判断で中断すると骨密度が急速に低下し、骨折リスクが上昇します。薬の変更・中止の判断は必ず医師と相談してください。

🩻 定期的な骨密度検査

  • 治療効果の確認のため、1〜2年ごとに骨密度測定(DXA法)を行います
  • 大腿骨近位部(Total hip)の測定が標準。骨密度の増加が大きいほど骨折リスクが低下します
  • 治療目標:Tスコアを3年以内に−2.5以上にすること(Goal-directed treatment)

☀️ ビタミンDの充足が治療の前提

  • ビタミンD不足(25(OH)D <20 ng/mL)は骨折リスクを高め、薬物療法の効果を低下させます
  • 天然型ビタミンDは処方薬がなく、サプリメントとして購入します(1日800〜1000 IU目安)
  • 日光浴・魚・きのこなど食事からの摂取も重要です

🦷 歯科の定期受診も忘れずに

ビスホスホネート・デノスマブを使用中は、かかりつけ歯科医での定期的な口腔ケアが顎骨壊死(MRONJ)の予防に最も重要です。薬の名前を歯科医師に必ず伝えてください。

骨粗しょう症でお悩みの方、
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診療時間(休診:水・日・祝)
午前 9:00〜12:30
午後 14:30〜18:00

※本ページの情報は骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2025年版および骨粗鬆症財団資料に基づく一般的な情報提供を目的としています。実際の治療は患者さん個々の状態を診察した上で医師が判断します。自己判断での薬の変更・中止は危険なため、必ずご相談ください。