小児上腕骨内側上顆骨折
小児上腕骨内側上顆骨折
小児上腕骨内側上顆骨折(Medial epicondyle fracture of the humerus)は、肘の内側にある「内側上顆」という骨の突起部分で起こる骨折です。
この部位は、前腕を曲げる筋肉(屈筋群)や肘の安定に関わる靭帯が付着しているため、強い力が加わると骨折しやすい特徴があります。
特にスポーツを行う子どもに多く、6〜14歳で発生しやすい骨折です。野球、体操、柔道など、肘に負担がかかる競技中に起こることがよくあります。
原因
主な原因は以下の3つです。
① 転倒や外傷
転倒して手をついたときに肘へ強い力が加わり、内側上顆が引っ張られて骨折することがあります。日常生活やスポーツ中の転倒で起こります。
② スポーツによる使いすぎ(過剰使用)
野球の投球や体操などで、肘の内側に繰り返し負担がかかることで発生します。
このような状態は「リトルリーグ肘(Little League elbow)」とも呼ばれます。
③ 肘の脱臼に伴う骨折
肘が**脱臼(Elbow dislocation)**した際に、内側上顆が筋肉や靭帯に引っ張られて骨から剥がれるように骨折することがあります。
症状
次のような症状がみられます。
- 肘の内側の痛み:動かすと強くなります
- 腫れ・内出血:肘の内側が腫れ、青紫色になることがあります
- 肘の動かしにくさ:曲げ伸ばしが困難になります
- 変形:骨のずれが大きい場合、見た目の変形がみられることがあります
- しびれや麻痺:近くを走る**尺骨神経(Ulnar nerve)**が影響を受けると、手や指(小指・薬指)にしびれが出ることがあります
診断
① 視診・触診
医師が痛みの場所、腫れ、肘の動き、しびれの有無を確認します。
② X線検査(レントゲン)
骨折の有無や骨片のずれを確認するために行います。
③ MRI・CT検査(必要時)
骨のずれが分かりにくい場合や、靭帯・神経の状態を詳しく調べるために追加することがあります。
治療法
治療は、骨のずれの大きさや神経症状の有無によって決まります。
① 保存療法(手術をしない治療)
骨のずれが小さい場合に選択されます。
- ギプスやスプリントで肘を固定します
- 固定期間は約3〜6週間です
- 定期的にレントゲンで骨の治りを確認します
- 固定中は運動やスポーツを控えることが重要です
② 手術療法
次の場合に検討されます。
- 骨片のずれが大きい
- 肘の不安定性が強い
- 尺骨神経の症状がある
手術では、骨片を元の位置に戻し、**ピンやスクリュー(Screw fixation)**で固定します。
神経が圧迫されている場合は、**神経を開放する手術(Ulnar nerve decompression)**を同時に行うこともあります。
リハビリテーション
骨が癒合した後は、肘の機能を回復させるためにリハビリを行います。
- 可動域訓練:肘の曲げ伸ばしを少しずつ再開します
- 筋力強化:前腕や肘周囲の筋力を回復させます
- スポーツ復帰:野球などは、段階的に投球量を増やします
無理な復帰は再発の原因になるため、医師の指示が重要です。
合併症
まれに以下の合併症が起こることがあります。
- 尺骨神経障害:小指・薬指のしびれが残ることがあります
- 肘の変形:骨の位置がずれたまま治ると変形が残ることがあります
- 関節の硬さ(関節拘縮):動かさない期間が長いと肘が硬くなることがあります
多くは、適切な治療とリハビリで予防・改善が可能です。
予後(見通し)
小児の骨は治る力が強いため、早期に適切な治療を行えば予後は良好です。
ほとんどの子どもは、元のスポーツや日常生活に問題なく復帰できます。
ただし、治療が遅れた場合や合併症がある場合は、長期的な経過観察が必要になることがあります。
クリニックからのメッセージ
お子さんが肘の痛みを訴える、投球後に違和感が続く、しびれがあるといった場合は、早めの受診が大切です。
気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。