全身性硬化症(Systemic sclerosis:SS)
全身性硬化症(SS)の病態と特徴
**全身性硬化症(Systemic sclerosis:SS)**は、**強皮症(Scleroderma)**とも呼ばれる自己免疫疾患で、**皮膚および内臓臓器の線維化(Fibrosis)と血管障害(Vasculopathy)**を主な特徴とします。
免疫異常・血管障害・線維化が相互に影響し合いながら進行する、全身性疾患です。
1. 全身性硬化症の病態生理(Pathophysiology)
SSの発症と進行には、以下の3つの細胞が中心的な役割を果たします。
① 血管内皮細胞(Endothelial cells)
- **エンドセリン1(Endothelin-1)**を過剰に産生し、血管収縮を引き起こします
- 接着分子(Adhesion molecules)の発現が増加し、免疫細胞の組織移行が促進されます
- これにより、慢性的な血流障害と組織障害が生じます
② Tリンパ球(T lymphocytes)
- 血管周囲や組織内に浸潤します
- 各種**サイトカイン(Cytokines)**を放出し、線維芽細胞を活性化します
③ 線維芽細胞(Fibroblasts)
- **コラーゲン(Collagen)**や細胞外基質を過剰に産生します
- 皮膚および内臓臓器の硬化・線維化を進行させます
病態の関係を表で整理
| 細胞 | 主な役割 | 結果 |
|---|---|---|
| 血管内皮細胞 | エンドセリン1産生、接着分子増加 | 血管収縮、免疫細胞の組織移行 |
| Tリンパ球 | サイトカイン産生 | 線維芽細胞の活性化 |
| 線維芽細胞 | コラーゲン・基質産生 | 皮膚・臓器の硬化(線維化) |
2. 全身性硬化症の主な症状
初期には、**指の腫れ(puffy fingers)**や軽度のかゆみなど、非特異的な症状がみられることがあります。
病気が進行すると、以下のような特徴的な症状が現れます。
- 皮膚硬化(Sclerodactyly)
指や手の皮膚が厚くなり、硬くなります - 皮膚潰瘍(Dermal ulcers)
血流障害により皮膚が傷つき、治りにくい潰瘍が生じます - 爪の萎縮(Nail atrophy)
爪が薄くなる、変形する、剥がれやすくなります - 石灰沈着(Calcinosis)
皮膚や筋肉内にカルシウムが沈着し、痛みや炎症の原因となります
3. 全身性硬化症の診断と鑑別診断
診断
SSは、以下を総合的に評価して診断されます。
- 皮膚硬化、指潰瘍、石灰沈着などの臨床症状
- 血液検査による自己抗体
- 抗核抗体(ANA:Antinuclear antibody)
- 抗Scl-70抗体(Anti-topoisomerase I antibody) など
鑑別診断
SSと似た皮膚症状を示す疾患との区別が重要です。
| 疾患名 | 特徴 |
|---|---|
| 乾癬(Psoriasis) | 鱗屑を伴う紅斑が主体で、皮膚硬化や潰瘍は通常みられません |
| 結核感染症(Tuberculosis) | 結節や斑点が出現することがありますが、進行性の皮膚硬化は一般的ではありません |
| 蕁麻疹(Urticaria) | 一過性の膨疹が特徴で、慢性的な皮膚硬化や潰瘍は伴いません |
4. まとめ
| 要点 | 内容 |
|---|---|
| 病態 | 血管内皮細胞・Tリンパ球・線維芽細胞の相互作用により線維化が進行 |
| 主症状 | 指の腫れ、皮膚硬化、潰瘍、爪の萎縮、石灰沈着 |
| 診断 | 臨床症状+自己抗体検査 |
| 鑑別 | 乾癬、結核感染症、蕁麻疹など |
補足メッセージ
全身性硬化症は進行性の疾患ですが、早期診断と適切な管理により、症状の進行を抑えることが可能です。
皮膚の変化や指先の異常を感じた場合は、早めに専門医へ相談することが重要です。