イリザロフミニ創外固定器を使用した手指変形治癒・交差指(Scissoring Finger)の治療
イリザロフミニ創外固定器を使用した手指変形治癒・交差指(Scissoring Finger)の治療
手指の変形治癒と交差指とは
手指の骨折が治癒する過程で、骨の位置や角度がずれたまま癒合してしまう状態を
**変形治癒(Malunion)**といいます。
特に**近位指骨(Proximal phalanx)**の変形治癒では、
- 角状変形(Angular deformity)
- 回旋変形(Rotational deformity)
- 短縮変形(Shortening)
が組み合わさって生じることが多く、指を曲げた際に隣の指と交差してしまう状態、
いわゆる**交差指(Scissoring finger deformity)**を引き起こします。
交差指があると、
- 指が重なって動かしにくい
- 物をつかみにくい
- 外観上の違和感
- スポーツや日常動作の制限
など、手指機能と生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。
従来の治療法とその課題
従来、手指の変形治癒に対しては、
開放矯正骨切り術(Open corrective osteotomy)+内固定(Plate / Screw fixation)
が行われてきました。
しかし、この方法には以下のような課題があります。
- 皮切が長く、瘢痕(scar)が目立ちやすい
- 伸筋腱(extensor tendon)との癒着を起こすリスク
- 術後の可動域制限
- 骨癒合までの回復期間が長い
- 内固定材料抜去のための二次手術が必要になることがある
特に、思春期や若年者では、整容性や早期の機能回復が重要な問題となります。
イリザロフミニ創外固定器とは
Ilizarov Mini External Fixator
**イリザロフミニ創外固定器(Ilizarov mini external fixator)**は、
ロシアの整形外科医ガブリエル・イリザロフ(Gavriil Ilizarov)によって考案された
**創外固定法(External fixation)**を、手指用に小型化した医療機器です。
細い金属ピン(wire / pin)を骨に挿入し、体外でフレームに固定することで、
骨の位置や角度を三次元的に精密調整できることが特徴です。
本治療法の特徴と利点
イリザロフミニ創外固定器を用いた治療は、
**最小侵襲矯正骨切り術(Minimally invasive corrective osteotomy)**として行われます。
主な特徴
- 約10mm程度の小切開で骨切りを行う
- 骨膜(Periosteum)を温存し、骨癒合を促進
- 角状・回旋・短縮といった複合変形を同時に矯正可能
- 内固定材料を使用しないため、抜釘手術が不要
- 伸筋腱への侵襲が少なく、腱癒着のリスクが低い
手術の流れ(概要)
- **透視下(Fluoroscopy)**で、近位・遠位指骨に細径ピン(通常1.5mm)を挿入
- イリザロフミニ創外固定器を装着
- 小切開から**オステオトーム(Osteotome)**を用いて骨切り
- 指を曲げた状態で、三次元的アライメント調整(3D alignment correction)
- 必要に応じて短縮の延長や微調整を行う
骨移植(Bone graft)は原則不要で、
術後すぐから**可動域訓練(Range of motion exercise)**を開始できます。
術後管理とリハビリテーション
- 手術直後から指の運動を開始
- ピン周囲は**クロルヘキシジン(Chlorhexidine)**などで清潔に管理
- 約6週間で創外固定器を除去
- その後、**ナックルスプリント(Knuckle splint)**を装着しながら機能回復を促します
この方法により、関節拘縮を防ぎ、早期の機能回復が可能となります。
治療成績と安全性
これまでの臨床経験では、
- 全例で**良好な骨癒合(Bone union)**を獲得
- 交差指変形は解消
- 疼痛や可動域制限は残存せず
- 握力や日常生活動作が大きく改善
- 瘢痕は小さく、整容性に優れる
といった結果が得られています。
合併症としては、
**軽度のピントラクト感染(Pin-tract infection)**がまれにみられますが、
多くは保存的治療で軽快します。
このような方に適しています
- 手指骨折後に指が交差する変形が残っている方
- 変形とともに動かしにくさや機能障害がある方
- 思春期・若年者で瘢痕を最小限に抑えたい方
- スポーツや日常生活への早期復帰を希望する方
当院からのメッセージ
イリザロフミニ創外固定器を用いた治療は、
機能回復と整容性を高いレベルで両立できる治療法です。
カラムス千駄木クリニックでは、
日本医科大学整形外科との連携のもと、
小児・思春期から成人までの手指変形治癒に対して、専門的な評価と治療を行っています。
手指の変形や動かしにくさでお悩みの方は、
どうぞお気軽にご相談ください。